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中国農業研究008

田嶋俊雄「第3章 農業」石川滋編(1984)『中国経済の中長期展望』。

■研究対象
いつ:
主に78年以降、中長期展望あり。
どこ:
中国。
だれ:
外国人研究者。
なに:
農産物消費=需要、農産物供給、農産物価格政策、中長期展望を念頭に置いた農業 政策。中国農業の把握のために日本農業の経験と比較。
目的:
石川総括主査から提起された問題は近代部門での食糧隆路の出現,食糧農産物の対 工業製品相対価格の上昇が近代化部門の工業の停滞をもたらすか否かである。(P.4 l.4)
■枠組・アプローチ
  • 農業経済論。
  • 政策提言的現状分析。
  • 比較研究。
  • ピッグサイクル。
  • 総要素生産性。
■結論

T、現在の中国農業が抱える3つの問題

@穀物消費水準はすでに充足しているのか。

日本の1950年代末の水準に達し,ほぼ穀物需要を満たすまでに達している。しかし,食 糧全体の所得に対する需要弾性値は依然として強い。また,穀物需要構成面からみると, 雑穀・薯類の減少,米・小麦の比重の増大が急速に進んでいる。動物性食品の消費水準は 日本の1930年代に相当する。この需要は今後急速に伸びると予想される。

A近来の価格・補助金政策がもたらす国民経済の中における意味。

1979年からの価格引上げ政策は生産者保護になっておらず,消費者の食料保護政策をと った。これが国家の財政負担を過重なものにしており,早晩修正を余儀なくされ,半永続 的な政策でないことを示唆する。生産者の供出価格の大巾値上げ後でも農村と都市の所得 格差は極めて大きい。巨大な財政赤字は皮肉にも国家の農業投資予算を漸減させる結果を もたらしている。したがって,これら一連の政策は早晩改められねばならないであろうと いう。

B中長期の農業計画の実現可能性について。

中長期の需要予測は穀物が1980年の1.5倍,綿花が1.6倍,肉が2倍,乳が22倍,水産物 は2.4倍である。これは日本の過去の食生産の変容経験に照らしておおむね妥当であると思 われる。但し,動物性食品についてはいささか高めにすぎるのではないかという印象が述 べられる。

U、農産物の供給問題

中国農業は外延的拡大が不可能である情況を考えると,土地基盤整備を含めた大々的な 投資が必要である。先の理由から政府投資には限界がある。毛沢東時代にはその不足を集 団的な投資で補って来た。人民公社を解体した現在,この集団的投資は急速に低下しつつ ある。また,協同経営による規模の経済を失ないつつある。結果として,農産物の生産量 の増大をもたらす,化学肥料,農薬を中心とした小農的技術が中心となった場合,農業労 働生産性の向上はどうなるか,その停滞は商品化率の向上に消極的に作用しないだろうか 。消費者の食糧保護的政策は実質的に第2賃金となり,この賃金引上げのための財政補填 は,終局には工業利潤の上昇に対して,抑制要因にはたらく。このような情況下で,政府 がとりうる有効な政策は,農村への消費財供給を増大し,農民の手許資金を都市工業へ回 流させる方向をあみ出すことであろう。

城西大学大学院 石川滋研究室
1999年8月6日 内田真人
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ファイル種別 ファイル名 サイズ 初掲載日 最終更新日
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