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中国農業研究009

石川滋(1992)「8.農業生産・販売・インセンティブ」『中国経済の成長と変動』青山学院大学総合研究所国際政治経済研究センター。


■研究対象
いつ:
第T期(1952-65)、第U期(1966-76)、第V期(1976-82)の3つの時期に分けて考察。
どこ:
中国。
だれ:
外国人研究者。
なに:
中国農業、生産性分析、生産組織分析、生産インセンティブ分析。
目的:
”経済成長の産業別考察の中で農業は特別の重要性を持っている…農業自体の生 産・雇用、非農業部門への食糧・農産物の供給・販売、生産隊の生産・投資インセンティ ブ制度の3つについて要約的に取り扱う。”(P.46L.7)


■枠組・アプローチ
  • 開発経済学。
  • 経済史。
  • 経済成長をするときの農業の役割。


■結論

T、農業自体の生産、雇用

生産:全期間を通ずる趨勢としての農業生産の成長は、概ね中国の支配的な要素賦存に適 合した土地節約的、労働使用かつ収量増大的技術変化を通じて実現された。

雇用:労働使用的な技術変化がポイント。具体的には、農業生産の重要な生産要素である 土地への基礎投資を労働蓄積によって行うこと、1ha あたり労働投入の増加によって、土地利用率、新農法の労働需要ピークを乗り切ることなどである。(?)

*労働投入の増大とともに労働生産性が低下していることに注目する必要がある。労働使 用的技術変化というのは、本来限界労働生産性を低下させることなく労働増投を進めるこ とを可能ならしめるものだが、中国のケースは明らかに、この点を超えて労働投下が続け られ、その結果、豊富要素に関する収穫逓減法則の作用が、技術進歩の力を越えて現れた のである。(これはしばしば”歴史的収穫逓減傾向”といわれる。)

U、非農業部門への食料・農産物の供給販売

非農業部門への農産物の供給:農業労働力の単位当たり生産性が低位水準で停滞を続けて いるとき、農家の生産経営活動は引き続き高度に自給的であり、生産物の商品化率が初期 的な低水準から脱却することは難しいだろうと思われる。

*商品化率のこのような状態のもとでは、人口都市化なかんづく都市雇用人口の増加は厳 しく制限されざるをえない。

*大躍進型の雇用拡大ケースを除いて通常の時期をみると、都市雇用の増加率は食料輸入 の能力を所与として、食糧の増産速度と商品化率の水準により厳しく制約されてきたので ある。(図9を参照)

V、生産隊の生産・投資インセンティブ制度

インセンティブ:第U期については、硬直的な農産物価格政策が農民の労働意欲および市 販・供出意欲を阻害する強い可能性があったとみられよう。それにも関わらず労働日当た り報酬の低下、増産貧乏という犠牲を払ってまで労働の増投がつづけられ、また商品化の ための増産が行われたのは、強制によるか、そうでなかったとするなら農村の自治的、共 同体的社会システムと地方党政府との組織との相互信頼的で協調的な運営がそれを可能に したものと考えられる。

*結論的にいうと、農産物価格政策の適切な運営は商品化率引き上げのために決定的重要 性をもっており、1978年の主要農産物買付価格改定はそのように評価すべきである。

城西大学大学院 石川滋研究室
1999年8月19日 内田真人
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ファイル種別 ファイル名 サイズ 初掲載日 最終更新日
全文PDFファイル chunouken009.pdf 26KB 1999-08-19 1999-08-19