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アジアNIEsの経済成長分析

 アジアNIEsの成長要因として5つあげることができる。

 第1は輸入代替型工業から輸出志向型工業への転換である。アジアNIEsの成長メカニズムは1970年代から機能を始めた。その成長メカニズムは、1988年の『通商白書』によれば、”外資導入→資本形成促進→生産能力拡大→輸出増加→輸入拡大→資本財輸入増加→資本形成促進”というものである。外資導入は日米企業、輸出増加は米国市場、資本財の輸入は日本が大きな役割を果たした。

 第2は積極的な外資の導入である。これにより固定資本形成の高い伸びを実現することができた。主な外資の導入先は米国と日本の企業であった。また、これらの国へは前線防衛国として米日政府の援助や米日企業の投資環境を整備するための政府の開発援助が行われた。

 第3は政治が安定していたことである。これはすでにふれたが米国が前線防衛国としてこれらの国に政治的安定を求めたためである。政治が安定していたため、経済は政治的要因で混乱することはほとんどなかった。しかし、これは第1に軍事、第2に政治であったために民主的ではなかった。韓国と台湾の経済が軍事政権の下で成長したことはこれをよく表している。

 第4は規律に富む教育された豊富な労働力の存在である。アジアの多くは儒教の影響を受けており、比較的教育に力を入れる傾向がある。非民主的な政権下ではあったが、政治的安定が持続したので学校教育が次第に普及した。また、アジアは約30億の人口を抱えるために労働力の需給関係が常に供給過剰であり、安い労働力を得ることができる。

 第5は積極的で有能な企業家層の存在である。これは、華僑と華人の存在をあげることができる。台湾、香港とシンガポールの経済成長に彼らの果たした役割は大きい。また彼らは、東南アジア地域にも多く、大きな役割を果たしている。しかし、彼らにはマレーシアのブミプトラ政策やインドネシアの華人迫害のような問題がある。これは、彼らがその国の経済において大きな地位を占めてしまうためである。また、各国が輸入代替工業化政策を採用していた頃に育った企業家もいる。彼らも大きな役割を果たしているが、輸出志向工業化政策により、徐々に巨大な外資が進出し、自立的な経営が困難になっている。


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