森田ゼミ96年黒旗福助トップ

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 福助15号 
発行所 :Y.H.アカデミー
パトロン:森田ゼミナール様

見聞エッセー集  山路博之

【耳障りなコトバ】
 いつの時代でもそうだが、大人達の世界に抵抗する意味で、自分達にしか通じないハヤリの言葉を使う若者が出てくる。私もかってヤングマンであった頃は、「ゲロゲロ」、「頭がピーマン」、「関係ないね」等という言葉を日常茶飯事に使っていた。最近の流行語としては、「超ムカツク」、「チョベリバ」であろうか。

 年輩者の間では、「言葉遣いが汚い」、「日本語として意味が通じない」等とお嘆きになられている方も多いそうである。しかし、私はそうは思わない。

 何故なら、自分達にしかわからないコトバをもつことで、彼らは仲間意識や自己主張をはかろうとしているからだ。昔の私のように。また、センスこそ違えど、「アッと驚くタメゴロー」等に代表されるコトバや、サイケファッション等が六十年代後半にかけて流行していた。つまり、今の四十、五十のオジサン、オバサンだって十代二十代の頃は変なコトバや格好に凝っていたのである。

 要するに、奇抜なコトバや格好は若者の自己主張の外面的現れとみてとれるのである。個性が大事な世の中であれば、茶髪や若者コトバも大目にみようではないか。

 しかし、どうしても耳障りなコトバが一つある。それは、「使えねえなぁ」というコトバである。本人同士はそれほど気にもしないのだろうが、最初聞いたときにはドキリとした。

 何かの用事を頼んで、相手が自分の満足を満たさない、あるいは芳しくない結果をもたらした時に使うコトバである。しかし、自分の役に立たないからといって、友達に向かって「使えねえなぁ」はどうだろう。言葉として素直にとらえれば、「お前は役立たずな奴」である。

 このコトバを聞くと、私はいつもビーバップ・ハイスクールのトオルがのろまな舎弟に向かって言う、「使えねえやっちゃなあ」のセリフを思い出してしまう。

 まあ、ビーバップの話はさておき、おそらく当人同士でもそんなに深刻なコトバとしてとらえていないのであろう。

 しかし、そういうコトバを吐いている人にあえていわせてもらいたい。「使えねえ奴と友達であるお前もツカエナイネ」。

 少なくとも越生線の電車の中で、友達か後輩に向かって大声で叫ぶのだけはやめてほしい。なにも自分の〈アンポンタン〉を世間の人に「公表」することもなかろう。昔の私のように…。