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はじめに

 世界最強最大といわれたソヴィエト連邦が、一九九一年一二月に崩壊したことは、一九一七年レーニンがロシア十月革命を成功させたこと以上に、今世紀における最大の政治変革であった。さらにソヴィエト連邦崩壊の「さきがけ」となった東ヨーロッパ諸国の自由化もまた、社会主義世界における重大変革であった。ソヴィエト連邦および東ヨーロッパ諸国における社会主義政権の崩壊は、何がその原因であったのか。崩壊原因論を大別すると次のふたつの説になる。第一の説は、社会主義理論すなわちマルクス・レーニン主義そのものに根本的欠陥があるとする説である。第二の説は、社会主義理論そのものには何ら欠陥はないのであるが、社会主義建設の方法において重大な失敗があったとする説である。いうまでもなく、ある国家が崩壊する原因には、多くの理由があり、ひとつの側面だけで説明することは困難である。第一説において、ひと口にマルクス・レーニン主義といっても、マルクス主義レーニン主義は厳密には異なっており、第二説でいう方法論にしても、なぜそのような方法しかとり得なかったのか、換言すれば、社会主義政権樹立にあたり、その方法しかなく、他の方法によれば社会主義権力が成立し得なかったということもある。

 ともあれソヴィエト連邦や東ヨーロッパ諸国の社会主義は崩壊した。しかし今なお地球上には、いくつかの社会主義国家が存在する。これら社会主義国家は、今後も存続するのであろうか。それも単に存続するだけでなく、社会主義的発展をとげるものであろうか。中国や北朝鮮やキューバの社会主義は、これからも存続しかつ発展し続けるのであろうか。かつてソヴィエト共産党が提唱し遂行した国際共産主義運動は、中国や北朝鮮やキューバによって継承されるのであろうか。国際共産主義運動そのものもまた重大な欠陥を含有していたのであろうか。これらは、これからの国際政治を考察する上で重要な課題であると考える。


  1. はじめに
  2. マルクス・レーニン主義欠陥説
  3. 社会主義建設失敗説
  4. まとめ

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