森田ゼミ96年トップ

まとめ

 社会主義国家崩壊の原因として、第一説と第二説を考察したが、結論が第一説であることは明白である。社会主義理論には、やはり根本的誤りが内在した。国民の意思に無関係に、前衛が権力を独占するというただ一点に誤りは集中する。政治的自由を認めない国家、それは古代や中世の専制支配と同一である。「先進的」ではなく、保守的、後退的でさえある。連鎖反応的に次々と崩壊した社会主義国家は、成立時すでに崩壊因子が内在した。今日ある社会主義国家も、政治的自由を否定し続けるかぎり、解体は時間の問題である。中国も北朝鮮もキューバも、共産党一党独裁制を維持すれば、広範な国民の支持は得られず、経済活性化も困難となる。天安門事件や金日成後継問題や難民流出問題は、社会主義体制の本質に原因する。指導者が国民の幸福と国家発展を真に願望すれば、独裁制を放棄し、複数政党制実施にいたる。自由公正かつ民主的国民投票で政権党を決し、国民を「解放」することが、真に勇気ある指導者である。古色蒼然たるマルクス・レーニン主義を金科玉条として墨守し、「解放」を拒否し続けるならば、国民の重大な審判を受け、非劇的結末にいたる。マルクスエンゲルスの資本主義批判は、一九世紀には優れた価値を有した。一九世紀の偉大な思想家として評価すべきであって、今日の社会に一字一句適合させることは無意味な時代錯誤である。レーニンも二○世紀初頭、ロマノフ王朝の専制支配を打倒する指導者として評価すべきである。二月革命以降のレーニン主義に批判すべき問題がある。今日の国際社会で、「帝国主義戦争を内戦に転化せよ」(5)とさけぶことは、国際の平和と安定をみだすのみである。社会主義体制は専制支配と経済搾取に苦悩する社会を短期間で一定水準まで発展させる強硬手段であり、緊急避難価値を認めても、永遠に存続すべきではない。ロシアや東ヨーロッパでは、マルクス・レーニン主義は今やその任務を終了した。次に到来する社会は自由主義社会である。


  1. はじめに
  2. マルクス・レーニン主義欠陥説
  3. 社会主義建設失敗説
  4. まとめ

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