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社会主義市場経済概論

ポイント

社会主義市場経済とは、

  1. 体制*1
    • 資本主義*2と社会主義*3
    • 所有権*4と使用権*5
  2. 制度*6
    • 市場経済*7と計画経済*8
  3. 移行経済*9


内田の見解

 社会主義市場経済は厳密にはありえない体制である。しかし、現実に中国経済は存在し ているし、1993年以降になると中国政府は社会主義市場経済であるといっている。

 中国社会主義市場経済についての個人的な見解を述べれば、社会主義は名目であり、市 場経済が現実である。市場経済が現実である以上、中国の実態は資本主義であるというこ とができる。このような体制は特殊であるが、もっとも近い類例を他国に求めるならば、 開発独裁*10を行い経済成長した諸国であろう。具体的には、韓国、台湾、インドネシアな どである。それら諸国の共通点は開発主義*11 であり、経済成長を続け生活が豊かになるの であるならば政治的な制限は仕方がないと考える。しかし、このような体制の欠点は政府 の失敗*12を未然に防ぐことができないことである。インドネシアの事例はよくこれをあら わしている。


  1. 社会制度を全体として構造的にとらえ,統一的に解釈するときにいう。旧体制(アンシャン・レジーム)・新体制,封建体制・資本主義体制・社会主義体制,独裁主義体制・民主主義体制あるいは天皇制などのように用いる。支配階級は体制のわく内で権力を握り体制維持を図るが,この状態を否定しようとする動きがいわゆる反体制運動である。

  2. 利潤追求を原動力とする資本の支配する経済体制。その特徴は、@生産手段が資本家の私有となっていること。A労働力が商品化されていること。B商品生産が支配的であること。C生産は無政府的であること、などであり、歴史的には、重商主義、自由競争的資本主義、独占資本主義の3段階をとった。

  3. 生産手段の私的所有から社会的所有への転換によって、搾取および階級対立の廃棄と、労働 者による計画的経済運営とを実現し、これを通じて経済生活安定と平等な社会を確立しようとする 理論と運動。またこの運動により建設された社会体制をさす。共産主義と区分してこの語が用いら れることもある。

  4. 物件の一種。一定の物について、法令の制限内において自由に使用、収益及び処分することのできる権利である。地上権、質権、抵当権のごとく、一定の限られた目的のために、一定の範囲で、一時的に用いられる制限物権(用益物権、担保物権)とは異なり、所有権は物を全面的に支配する物権である。

  5. 中国不動産制度:中国では、都市の土地は国家所有であり、農村の土地は農民の集団所有であると中華人民共和国憲法に規定されている。他方、中国政府は1979年の改革開放経済の方針の下に土地の所有権から使用権を分離する政策を進めている。88年の憲法および土地管理法の改正で国家が土地の使用権を有償譲渡できるむねの規定した。したがって、すべての都市で、国家は一定の年限において土地使用権を譲渡(出譲)でき、譲受人は土地使用権を第三者へ再譲渡(転譲)でき、土地使用権に担保を設定できることになっている。ただし、転譲には、国家が譲渡する際に取り決めた開発目的が達成されている、土地使用権の期間内である、増価値税の支払いなどが条件となる。農地についても、いったん国家所有とされた後は、土地使用権の譲渡が可能である。

  6. 社会内で持続的かつ共通に了解され規範として意識されている行動の体系。伝統社会は習俗としての制度が自明的に安定している社会であるが,近代社会では,制度が明文化されて法や組織に機構化され,一方,内面的規律としての個人倫理が生まれる。大衆社会においては制度に持続性がなく,制度の融解現象が起こるとともに,他方マスコミなどへの順応が生じる。

  7. 経済主体間の商品、労働、貨幣の売買・取引をめぐる自由競争を通じて価格が成立する場を市場といい、この市場機構を通じて需給調整と資源配分が行われる経済のことを市場経済という。

  8. 財・サービスの生産と消費の調整を、市場によってではなく、生産財の社会的(国家的所有に基づき、計画の作成と実行を通じて行う経済システム。ソ連の指令経済、ユーゴスラビア労働者自主管理、ハンガリー新経済メカニズム(市場で自由に行動する企業を政府計画実現に向けて経済レギュレーターで誘導する方式)の3タイプの実験が行われた。

  9. 計画経済から市場経済への転換過程にある過渡的な経済制度。所有権の民間への転換や市場機構の導入だけでなく、インフラストラクチュアの整備など多様な問題の解決を迫られ、相当の期間継続することが予想される。具体的には、東欧、ロシア、ベトナム、中国などである。

  10. 権力を握った軍・政治エリートが開発を至上目標とし、開発の成功を支配の正当の根拠として市場に対して政府が強力に介入することを容認する体制である。開発に役立つ限り、政治的には議会制民主主義に制約が加えられることが多い。

  11. 遅れて経済発展を開始した国で、国家の主導性のもとに産業発展のための資源動員を図るために生まれた産業機構をいう。ただし、私企業自体を否定せず、むしろその発展を促進する点で、社会主義や国家資本主義とは異なる。しばしば開発独裁とよばれる権威的な政治体制と結びつくことがある。

  12. 外部性、公共財の存在は「市場の失敗」として市場の効率的資源配分実現の障害となり、政府の市場介入が処方される。外部性下でのモラル・ハザード、公共財需要の虚偽の申告、誤った費用分担等は、この政府の介在による効率性の実現を失敗させる原因となる。


城西大学大学院 産業組織論
1999年10月14日 内田真人
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