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第1章 中国経済の特徴

第1節 比較体制論と経済開発論

 中華人民共和国(以下中国と略称)は1949年に社会主義国としてスタートした。当時の国際環境は第二次世界大戦後の東西冷戦期にあった。中国は周知の通り東側であった。そのため当時一般的に中国経済を理解するために社会主義経済理論が用いられ、それをより良く理解するために資本主義の体制と比較した比較体制論が用いられた。しかし、中国は東側陣営にあって特異な地位を占め、且つ南北問題においては南側に属していた。

 1970年代末になると計画経済の行き詰まりからの市場志向経済への移行が始まった。そして、更に南側の発展途上国が輸入代替型経済から輸出志向型経済へ移行して、概ね成功していたので輸出志向型になった。現在では中国経済を理解するために政治経済に主眼をおいた比較体制論よりは経済成長に主眼をおいた経済開発論のアプローチが多く用いられている。私は中国経済を理解するために経済開発論のアプローチが有効であると思う。しかし、中国経済には国有企業問題等の計画経済の残滓があり、西側諸国の経済発展の経験から抽出された経済開発論をそのまま当てはめることには疑問が残る。また、経済成長に主眼をおいた経済開発論は1992年の国連地球サミットにおける「持続可能な開発」の理念や1997年におけるアジア諸国の経済失速の経験から再検討されなければならない。

 アジア諸国、特にASEANの経済失速には様々な原因が考えられる。その原因の1つとして経済成長の必要条件として政治的安定をあげ、そのために開発独裁を容認する風潮を作ったことがあるのではないか? 経済開発論はマクロ経済学的で経済成長のために政府が経済に積極的に介入することを許容する。政府が中心になって経済成長をする事に異論はないが政府の失敗も十分に考えられる。政府の失敗を修正するために政府に意見を言う何らかの勢力が国内外にあることが望ましい。

 経済開発論は理論的で客観的な概念体系である。そのために普遍的であり、議論を論理的にすることができるという優れた面を持っている。これは社会学が進むべき1つの道である。一方で発展途上国が経済成長という目標を設定して、その具体的な方法を考えてみると経済開発論だけでは、すべての答えを準備することができないように思う。

 途中から最近漠然と考えていることを書き記したのでまとまりがなくなった。本論では可能な限り経済開発論のアプローチを用いるようにする。比較体制論は勉強不足であるし、漠然と書き記したことをきちんと論ずるにはまだまだ力不足である。本章では中国経済の特徴を概説するために歴史と地理も取り上げる。それは中国の特殊性が長い歴史の縦軸広大な国土の横軸の積によって生じると思うからである。

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はじめに
第1章 中国経済の特徴
 第1節 比較体制論と経済開発論
 第2節 中国の経済史概略
 第3節 巨大な国土と人口
第2章 開発経済学のアプローチ
 第1節 工業化政策
 第2節 W.W.ロストウの離陸
 第3節 二重経済発展モデル
第3章 農村における近代的工業部門
 第1節 郷鎮企業の発展過程
 第2節 郷鎮企業の統計分析
おわりに
参考文献

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