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第2節 中国の経済史概略

 これまで中国の経済は政治から大きな影響を受けてきた。そのため政治の転換点と経済の転換点はほぼ一致する。大きな政治の転換点として1911年辛亥革命、1949年中華人民共和国の成立、1978年から始まった改革開放をあげることができる。中国経済を経済史で分類するためにはいくつかの概念を用いることができるだろう。

 まず大まかに分類すれば辛亥革命までを封建時代と位置づけられる。経済史が問題とする経済発展段階説を用いれば、長い間変化のなかった時期であるとすることができるだろう。辛亥革命からは中国が今日の経済成長をするための必要条件を徐々に満たしていった時期であるということができる。

 ここではW.W.ロストウ経済発展段階説を用いることにする。W.W.ロストウ経済発展段階説を用いた説明は第2章において詳しくすることとし、ここでは簡単に触れることにする。W.W.ロストウ経済発展段階説の要点は”離陸(take off)”の概念である。この離陸の前には2つの時期を経なければならない。それらは伝統的社会離陸先行期である。伝統的社会辛亥革命までと考えていいだろう。W.W.ロストウによれば中国は1952年から離陸に入っている。すると離陸先行期は自動的に辛亥革命から離陸期までの中華民国期ということになる。

 新中国の成立と離陸期への移行はほぼ一致する。通常、離陸期に経済は停滞局面から成長局面へと移行する。しかし中国経済は大きな成長を遂げることができなかった。これらは一般に毛沢東指導下で行われた大躍進政策の失敗やプロレタリア文化大革命による政治的混乱で説明される。又は1991年ソビエト連邦崩壊の事実から社会主義経済そのものに欠陥があるという指摘もされる。

 今日の中国経済の発展は一般に1978年から始まった改革開放によってもたらされたと言われている。この政策は開発経済学の用語に置き換えれば輸入代替型から輸出志向型へ、計画経済から市場経済への移行である。すでにふれたが中国の経済はその時々の政治と国際関係に大きな影響を受けてきた。1989年に六四天安門事件があり、国際関係の一時的な後退があったにも関わらず、それは中国経済の成長を止めるものにはならなかった。これは中国経済を構成している各経済主体が経済成長の必要条件を満たしていたからではないか。

 こうして中国の経済史を大まかになぞってみると今日の中国経済がより理解できる。一言で言えば、市場経済による経済第一主義である。そして中国政府と人民は経済の停滞をもたらす政治的混乱を嫌っていることが分かる。

 しかし、一般に歴史はそれほど単純ではない。毛沢東の指導下の中国において経済より政治が重要視されたのはそれなりの必然性があるし、歴史は昨日の教訓が今日の成功をもたらしたからといって、明日の成功を約束しない。中国の経済史概略と題したが、本節ではまだまだ不十分である。これは今後の課題にしたい。


はじめに
第1章 中国経済の特徴
 第1節 比較体制論と経済開発論
 第2節 中国の経済史概略
 第3節 巨大な国土と人口
第2章 開発経済学のアプローチ
 第1節 工業化政策
 第2節 W.W.ロストウの離陸
 第3節 二重経済発展モデル
第3章 農村における近代的工業部門
 第1節 郷鎮企業の発展過程
 第2節 郷鎮企業の統計分析
おわりに
参考文献

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