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第3節 巨大な国土と人口

 中国の人口は世界一である。一般に12億人以上と言われている。人口という基本的な統計データをとるだけでも一苦労である。経済学、特にマクロ経済学において正確な統計データは欠くことができない。この点において中国の巨大さはマイナスとなる。中国の巨大さがマイナスとなる問題には地域間格差や食糧やエネルギーの問題がある。

 地域間格差は一般に図1-1のような地域別の1人当たりGNPで表される。地域間格差は中国が高度経済成長をする以前から存在していた。それは巨大な国土ゆえということができるかもしれない。一般には経済成長でそれは解消される、又は全体が底上げされると言われている。確かに経済成長によって全体が底上げされ、貧困人口が減少している。しかし地域間経済格差はいっこうに縮小しない。他国の例をあげれば、1955年の日本では第1位の東京都と最下位の鹿児島を比較すると3倍の開きがあった。1993年のインドではデリー直轄市とビハール州の間で4倍の開きがあった。中国は図1-1から分かるように上海と貴州省の間で9.7倍もの開きがある。地域間格差は1人当たりGNPだけでなくインフラストラクチャーなどについても言える。

 食糧問題とエネルギー問題は、巨大さ故に中国だけの問題にとどまらない。世界の食糧相場を騰貴させた1995年の大量輸入、環境問題との関係で石炭の大量消費の問題、1993年から石油の純輸入国に転じたことはその具体例である。

 最後にその巨大さ故に完全な国内統一市場を作ることができない点をあげる。しかし、この点はプラスでもある。中国は欧州連合が統一市場のために用いた努力に比べればそれより小さな努力でそれよりも大きな統一市場を作ることができるかもしれない。

 中国の巨大な国土と人口はマイナスにもプラスにもなる。またその巨大さ故に国内問題にはとどまらないのである。

図1-1 省別1人当たりGNP
図1-1 省別1人当たりGNP
(資料)『中国統計年鑑』1996。

出所:日本興業銀行編(1997)『中国 2001年の産業・経済』東洋経済新報社,31頁。[Amazon]
注1:この図から沿海部と内陸部の格差を読みとることができる。

はじめに
第1章 中国経済の特徴
 第1節 比較体制論と経済開発論
 第2節 中国の経済史概略
 第3節 巨大な国土と人口
第2章 開発経済学のアプローチ
 第1節 工業化政策
 第2節 W.W.ロストウの離陸
 第3節 二重経済発展モデル
第3章 農村における近代的工業部門
 第1節 郷鎮企業の発展過程
 第2節 郷鎮企業の統計分析
おわりに
参考文献

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