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経済哲学のすすめ!

ポパーの「三つの世界」を起点にして

 私は、以下で、「ポパーの『三つの世界』を起点にして」というテーマで経済学 における哲学的研究の重要性を説こうとおもっています。本論に入るまえに、この テーマについて一つの前おきと結論を述ぺておきます。

 前おきというのは、「起点にして」という言葉についてです。「起点にして」と いえば、通常は、肯定的な意味合いが含まれるでしょう。ここでは、認識論の点か ら直接にポパーを批判することを試みてはいません。しかし、私は、ポパーとは逆 の結論を得ています。ポパーも彼の書物、『客観的知識』で「挑発(provoke)す る」(〔3〕123頁)と言っているように、私の以下の主張は、ポパーに挑発さ れた結果到達した私独自の見解です。

 次に、結論を提示しておきましょう。

 私は、経済学的研究の営為が三つの性質に基づいて三つの世界に区別されうると 結論します。それら三つの世界を図式化してみると、(1)実践的な性質をもつ「 実践的な経済学的認識の世界」、(2)意味という性質をもつ「形而上学的な経済 学的認識の世界」、および(3)論理的な性質をもつ「論理的な経済学的認識の世 界」となります。そしてこの図式化は、経済的世界観を学問的対象としてとりあげ る必要を訴え、それゆえそのような学問分野の存在をあきらかにします。私は、こ の学問分野を「経済哲学」と名づけました。そして、そこでは、我々の経済生活様 式と経済学上の世界観との相互関係の分析ということが主要な研究主題になるでし ょう。ところでこのような分析から得られる、より積極的で、より実際的な効果を 尋ねられれば、それは、変化を遂げている経済生活様式に即応した経済的世界観の 展望が開けるということになります。

 それでは、このような結論を導出した過程を説明してみましょう。

浦上博逵「経済学再考」『現代のエスプリ 経済学:危機から明日へ