森田ゼミ96年黒旗福助トップ

hukusuke  福助3号  
発行所 :Y.H.アカデミー
パトロン:森田ゼミナール様

第三世界での人口爆発  報告者:山路博之

以下で述べる内容は、【石 弘之『地球環境報告』(岩波新書)】を基に作成した報告書(レポート)である。

 世界人口は1987年ついに50億人を突破した。こんな急激な増加は、長い人類の歴史でも過去30年ほどの突発的な現象である。400万年以上前にアフリカに出現したと考えられる人類が、最初に10億人となったのは、19世紀初めとされる。国連人口活動基金の『世界人口白書』によると、それが1918〜27年ごろ20億人となった。30億人を超えたのは、60年。それから14年後の74年には40億人となり、その13年後には50億人を突破した。今世紀末に60億人を突破することは、まず確実である(A参照)。

[A]世界人口の増加と将来推計
17世紀半ば頃 19世紀初頭 1918〜'27年の間 1960年 1974年 1987年 1999年 2010年 2022年
世 界 5億 10億 20億 30億 40億 50億 60億 70億 80億
1958年 1975年 1990年 2002年 2014年
発展途上国 20億 30億 40億 50億 60億
(出典:国連人口活動基金)

地域別で見てみると、アジアでは増加率は2%を割って下降傾向が定着してきた。といっても、この理由の大部分は、世界人口の4.6人に1人を占める中国の過激な「一人っ子政策」に負うところが大きい。中南米はまだ2%を超えているが、やっと頭打ちになってきた。アフリカはまだ高い増加率が止まらない。国連推計を信じて、22世紀初めに105億人で世界人口が安定するとしても、あと50億人が途上国人口に上積みされる。

 この急激な発展途上国の人口増加は、農山村の過剰人口を生み出した。この結果、限られた土地に集中した農民によって、休耕地の短縮、無理な輪作、一部放牧地の家畜の集中などの過剰な耕作・放牧が行われ、農村・放牧地での土地の酷使が顕著になってきた。これが、発展途上国の農業基盤を危うくしている砂漠化、土壌の侵食、耕地の荒廃を招く原因となった。

 自然環境の悪化を人口増加のみに帰するのは、発展途上国の現状を見ると、確かにバランスを欠いた議論である。これまでの人口圧と環境破壊の議論の中でも、もっとも欠落していたのは、発展途上国で急速に進行している特権階級や大地主への土地の集中であろう。

 こうした土地所有の遍在は、広く存在する。インドでは、農家の70%は2ヘクタール以上の土地しかなく、その耕地を合わせても、全耕地の21%に過ぎない。その一方で、10ヘクタール以上の大農が全耕地の31%を占めている。

 土地集中は中南米ではさらに進んでいる。国連食糧農業機関(FAO)の報告によると、7%の人口が93%の農地を独占している。米国のフロリダなどに住んで、自家用機で自国と行き来する不在地主と、家族さえ養えない零細農民とに、両極化した国々だ。

 今世紀は、特に人類の世紀となった。医学の進歩による病気の制御、化学物質の投入による農業の生産性の急上昇、エネルギーや鉱物資源の大量消費、合成化学物質の氾濫……といった環境の人口化の道をひた走る。1900〜85年の間に、人口は3倍の増加なのに対して、実質GNPは21倍、エネルギー消費量は15倍もの急増を示しているのが、それを物語っている。   

 この大量生産・大量消費は、一次産業にあっては、森林、表土、水、野生生物といった天然資源の略奪となり、二次産業では、二酸化炭素増加などに代表される地球のエネルギー収支の撹乱、さらに環境汚染、廃棄物の急増といった問題を起こし、自然環境へそのツケが回されてきた。とくに、こうした世界経済の拡大に巻き込まれた発展途上国は、一次産品やその低加工品の輸出への依存をますます強めざるを得なくなり、木材の乱伐、商品作物の作付けの拡大、公害企業の受け入れなど、環境のダンピングとも思える天然資源の収奪に拍車がかかっている。