森田ゼミ96年黒旗福助トップ

hukusuke
 福助25号 
発行所 :Y.H.アカデミー
パトロン:森田ゼミナール様

変人日記−今治編−  山路博之

八月二十六日(月)【脳内モルヒネ】
 その日は朝から暇だったので、本屋に出かけることにした。
 「今月の一押しコーナー」で、私の目を引いた本が一冊あった。
 春山茂雄の『脳内革命』である。
 ミーハーな性格も手伝って、その本を購入することにした。

 『脳内革命』の内容を簡単に述べるとこうである。
 「まず、物事を肯定的(プラス的)にとらえる。そうすることによって、脳内モルヒネが出て健康になるわけである。」

 夕方過ぎ、私はまるで〈モルヒネを打たれた患者〉のように〈脳内モルヒネ信者〉になっていた。
 「神様、仏様、春山様」と、すっかり「脳内モルヒネ、脳内モルヒネ…」と、お経のように唱えていたのである。

 単純な私は早速、晩ご飯から試すことにした。
 晩ご飯のおかずは、私の嫌いな魚料理であった。
 私はニコニコしながら、魚にパクついた。
 そんな私の意味のない笑顔に当然、家族の者は異様な感じを覚えていた。

 心配して母親が、「どうしたの?」と尋ねる。
 すると私は、まってましたとばかりに「脳内モルヒネじゃ!」と得意げに答える。
 それを聞いた妹が、「バカじゃん」と呟く。
 「なに〜!」と、私はかっとなって怒りだした。
 こうなると、もう脳内モルヒネどころではない。
 結局、兄妹ゲンカをはさんだ賑やかな晩ご飯になった。

 (脳内モルヒネを出すにはまず環境改善が大切だな)等と、訳の分からぬことを考えながら床に就くのであった。チャンチャン