森田ゼミ96年黒旗福助トップ

hukusuke
 福助26号 
発行所 :Y.H.アカデミー
パトロン:森田ゼミナール様

能力開発学

「私にはできない」でなく「誰にもできない」と考えているか
 ナポレオンは、「余の辞書に不可能という文字はない」というあまりにも有名なことばを遺しています。これを、たんなる自信過剰な人間の不遜なセリフととらえると、解釈を誤るでしょう。ナポレオンは、こうもいっています。

 「不可能は小心者の幻影であり、卑怯者の逃避所である」と。

 小心者は、できるかどうかをきちんと考えずに、いたずらにおびえます。卑怯者は「私にはできない」といってすぐに逃げてしまいます。ナポレオンは、困難に立ち向かおうとしない人々の姿勢を問うているのであります。

 人間の自信はもろく、ちょっとしたきっかけでガタガタと崩れてしまいます。それがマイナス思考の入り口です。ふだんは元気な人でも、「なにをやってもうまくいかない。あれをやってもだめ、これをやってもだめ」というふうに減点法でものごとを考え出すととたんにおかしくなります。自信を回復したいなら、第一に、たとえ心のなかで思っていても、「不可能」「できない」などということばを口にしないことです。ことばが、免罪符になり、努力を放棄することになるからです。

 そしてもう一つ、ちょっとしたコツがあります。スポーツの世界では、失敗したとき、負けたときに自信をうまく回復できる人が勝者になります。本番での失敗はつきもので、どんな天才でも試合に負けることがあります。そのときの悔しい思いやら落胆を乗り越えられる人が一流になれるのです。

 バルセロナオリンピックの体操銀メダリスト、池谷幸雄氏が自信回復のノウハウに開眼したのは、15歳のときだったといわれています。高校1年のときに出場した高校総体は、いつもの力を発揮できずに個人総合9位でした。年上の出場選手に圧倒され、そのなかで演技をすると思うと食事も喉を通らず、睡眠不足にもなったそうです。ところが同級生の西川大輔氏は2位になりました。同じレベルの選手だったのに、なぜ差がついたのかを考え、「要は気持ちの持ち方」という結論を得たのです。そして彼が導き出したプラス思考は、「どんな強い選手も、人間なんだ。いつかは失敗する」でした(朝日新聞)。

 自信をなくしたときは、「私には不可能」「できない」ではなく、「みんなにだって不可能」「みんなにもできない」と考えるのです。あるいは優秀な知人が身近にいるならば、「あの人だって失敗する」「あの人にもできないことはある」と考えてみるのです。その知人には悪いですが、数分、いや数秒で自信を回復できる特効薬になるでしょう。