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一日本語学校の視点から見る中国北京の日本語教育

今後の課題---利益率の向上と教師の待遇

 本校は日本式日本語教育を北京に移植することに成功し、2002年までに日本留学で経営基盤を確立し、2003年日系企業、2004年大学と新たな市場を開拓した。

 2003年のSARS流行は、本校と同時期にスタートした外資系民間日本語学校を撤退に追い込み、2004年からの日本留学冬の時代の訪れは、日本留学コースを有する北京の日本語学校に大打撃を与えた。

 以上のような市場構造において本校は日本留学の不安定性、学費に対する上限価格規制等を所与としながらも民間学校であるが故の自由なカリキュラムと提案型日本語教育で表2の市場成果を上げることができた。

表2: 中国における一民間日本語学校の収入総額
収入総額(人民元) 前年度増加率(%)
2001年 1,120,000.00 ---
2002年 1,345,000.00 20.1
2003年 1,003,800.00 -25.4
2004年 1,395,000.00 39.0
2005年 2,175,000.00 55.9

 この業界においてこの数字は成功といえるものであるが、大きな課題もかかえている。

 その最も大きなものは教師の待遇である。北京において教師の待遇向上を妨げているのは主に3つである。

 第1は監督機関が学費の上限価格規制等を厳格に運用し、教育の産業化を制限していること。第2に北京に住居を持たない教師、とりわけ日本人教師に適当な住居を提供しなければならないにもかかわらず、北京の不動産価格が継続的に上昇していること。第3に教室、教師等が供給過剰で許認可を受けていない私塾が少なくないこと。

 これらを所与とすると経営規模を拡大することはできても利益率の低い日本語教育のみで教師の待遇改善をはかることは難しい。待遇の低さは、日本語教育の世界に飛び込もうとする人を躊躇させ、すでに従事している人材の流失を招く大きな問題である。

 この問題への対応は、2つ考えられる。

 1つは中国の民間英語教育の雄・新東方学校に倣い、北京ブランドを背景に地方にも進出し、チェーン展開をし、学習参考書等の関連商品の開発まで手がでける方法である。

 もう1つは自らの経営資源を生かして始められる日本語教育以外の分野に新規参入することである。

 本校は前者を意識しつつも長期目標とし、後者を当面の目標として試行錯誤をしている。


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中国 北京平成日本語学校
2006年1月 内田真人