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リアル

 朝、スピーカーから流れるラジヲ体操の音で目が覚めた。やけに頭の中がすっきりとしている。ぐるり見廻す。
 やはり夢ではなかった。僕は留置場の中にいるのだ。
  コトリ
 ドアの方で音がした。みると朝飯 ―― バタ付きトーストと、コーヒー ―― が、置いてあった。昨日は気が付かなかったがドアの中腹ほどにそのための穴があったのだ。そこから入れられたのであろう。
 『冷や飯を食らう』とは、こんな事なのかも知れない。トーストは冷たく、バターの膜が張っている。カップに入ったコーヒーは冷たいよりも、少しだけぬるいに近いと言うだけであって、間違ってもホットコーヒーとは呼びたくないような代物であった。
『まだ有罪と決まった訳でもないのに、酷い仕打ちをするもんだな……』
 僕は一人ぼやいた。
 冷たいトーストを冷めたコーヒーでムリヤリ胃に押し込み、流し込んで一息つく。

 タバコが吸いたい。

 切実にそう思った。禁煙なんてしたくなかった。
 何故にこんな事になってしまったのであろうか。何故に僕は捕まってしまったのであろうか。

 僕はまた、昨日と同じ事を考え始めた。


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