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オーガズム

 ……………。
 もしかしたら、それこそが本当の罪なのかも知れない。たとえ法に触れていないにしても、社会規範を踏み越えていてそれに気が付かないという事。その罪は間違いなく大きいであろう。
 だがしかし。僕以外の人は、自らが犯した罪と言う者に気が付いているのであろうか。

 原罪 ―― アダムがエバにそそのかされて食べてしまった禁断の果実。罪の果実。

 それだけでは無い。たとい原罪と言うものが存在しないとしても、人は罪を犯さずに生きてゆけるものなのであろうか。僕は何かを食べながら、消費しながら生きている。つまり、動物や植物を殺し、その死骸・死肉によって生きている……否、生かされているのだ。虫も殺さぬような顔をしながら、平気で、動植物の死骸をついばんで生きているのだ。人間どもの生命とは、その他多数の尊い生命を踏みにじる事によって成り立っているのだ。人は罪を犯さずに生きてゆくことなど出来はしないのだ。

―― 人の子よ! 滅びるがいい! ――

 だがしかし。罪を犯す事が本当の罪であるかどうかは、それぞれの、その後に行動にもよるのではないか。そうじゃないか、他を殺す事が罪ならば、人は皆、咎人になってしまうではないか。
 もし……もし他を殺したとしても。つまり他の生命の生き延びてゆく可能性を起ち切ってしまったとしても、殺した側の生命がそれに見合うだけの行動を為せば、その罪は罪で無くなるのではないだろうか。
 果たして僕は、罪に見合うだけの行動をしてきたのであろうか。僕の罪は償えているのであろうか。
 多分その罪は償い切れていないのではないか。罪を償うに値する行動とは、そう、正直に生命活動を行う事なのではないか。  言葉が悪い。
 つまり生きて行く事に疑問を感じてはいけないのだ。それは果たして、今まで生かさせてくれてきた魂達への冒涜なのでは無いだろうか。

 僕は怖い ―― 本当に生きていて良いのか。
 僕は問う ―― 本当に生きていて良いのか。

 怖いんだ。生命活動を行う事が。そして、それによって蓄積されて行く僕の罪が。

 助けてくれ!
 助けてくれ、神よ!

 ……ハン。無理だな。神とは罪に対する罰の執行者であって、救済者ではない。そして何より、僕は神を信じていない。
 ……刑を受けよう、甘んじて……。

 どのような罪を犯し、どのような法に触れ、どのような処罰を受けるのか。
 そんな事は関係ない。
 実際的に僕は、罰に見合うだけの行動をし、罪を背負ってきてしまっているのだから。僕が僕を許す事が出来ないのだから。


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