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学問的行為者の学問的行為

 学問とは自己満足の世界である。さらにつきつめれば、学問は自分だけにしかわからないものであってもいいわけである。

 たしかに、己だけにしかわからない心や頭の中で空想してもよく、又自分だけの「コトバ」で表現してもいいわけである。何故なら、それが学問という性質であるからだ。しかし、もしも「自分の学問内容について他人からの称賛を得たい」という知的欲求とは異なる”欲求”が起こり、それを解消したい場合にはどうすればいいのであろうか。

 つまり、自分の学問内容に関して、「できれば他人に認めてほしい」や「できれば他人に褒めてほしい」という欲求が起こった場合にどうするかである(B参照)。

「B」明らかに欲求が向けられる対象物の異なる両者

前者:欲求 → ? (疑問)
   「疑問を知りたい」という対象物に向けられる知的欲求

後者:欲求 →   (他人の称賛)
   「他人からの称賛を獲得したい」という対象物に向けられる欲求

 当然、後者の欲求を満たすためには、いままでのような自分にしかわからないやり方では、他人からの称賛はもちろん伝達することすら不可能である。そこで、他人にもわかってもらうためには、共通の伝達方法を用いる必要がある。それは、例えば共通の言語を用いた会話や論文などによる方法である。

 繰り返しになるが、本来学問とは、自分が満足すればそれで成立するものである。つまり、学問が成立する最低条件は、自分が満足できる状況が確立されればいいわけである。だが、自分が満足できる条件に他人の称賛(評価)が必要になった場合どうするのであろうか。すなわち、一旦は満足したものの、その後、「他人にも認めてもらいたい」や「他人にも褒めてもらいたい」という他人の評価を希望する行為(他人の称賛を希望する欲求)が起こった場合である。この場合は、先ほど述べたように、他人にも理解できる共通の言語を用いた会話や論文などで伝達する必要が出てくる。

 だが、もしも仮に、最初から他人の評価だけを求めて学問をした場合はどうなるのであろうか。このような場合でも、真理や事実を正しく伝達していればなんら問題はなく、学問から逸脱した行為でもない。しかしながら、問題なのは次の場合である。それは、他人の評価を気にするあまりに、真理や事実を歪曲した場合である。これは、学問というよりも、むしろ「学問的行為]という形で区別する必要がある。

 たしかに、学問とは自己満足の世界ではあるが、そのことを理由に嘘八百を並べ立てて、他人の気に入る結論を世間(社会)に出しても良いわけではない。何故なら、こうした虚偽の学問報告により、迷惑を被る多くの人達が出てくる恐れがあるからだ。要するに、己の学問内容を他人に伝達して、「他人の評価」を受ける場合には守らなければならない最低限の約束ごとがあるわけである。

 以上のことから、学問を真剣かつ純粋に行っている人達に配慮をする意味で、最初から他人の良い評価のみを求めて学問を行い、時として事実を歪曲する状態を学問的行為と呼び、そういう人物を「学問的行為者」と称することにする。

 さらに言えば、学問を行うのに政治的配慮は必要ないわけである。政治的配慮とは、ウソのことである。ウソの含まれた学問内容は、他人はもちろんのこと、自分にとっても害以外のなにものでもないはずである。何故なら、ウソを含んだ学問内容を自らが提示して、「満足のいく学問ができた」という心理に果たして本人がなれるかどうかを考えれば一目瞭然であるからだ。又、ウソの含まれた学問内容が他人に及ぼす具体的な影響は、少し考えてもらえればおわかりのことであろう。
 以上のことより、学問に対して政治的配慮を行えばそれを学問的行為と呼び、そういうことをした人物を学問的行為者と称したい。


序章
 学問とは自発的行為である
 学問とは自己満足の世界である
 学問的行為者の学問的行為
 学問は必ずしも社会の役に立たないのは当然
 私的空間と公的空間をつなぐ方法−論文−
 序章での引用文献・参考文献
第T章 何故、日本の物価は世界と比べて高いのか(経済学)
 (1)はじめに
 (2)為替レートの変化
 (3)内外価格差の現実
 (4)むすび
    第T章での引用文献・参考文献
第U章 何故、戦争は起こるのか(国際政治学)
 (1)はじめに
 (2)戦争の歴史
 (3)経済的要因からみる戦争の出現
 (4)生物学的要因からみる戦争の出現
 (5)何故、戦争は起きるのか
 (6)経済制裁で、北朝鮮を追いつめてはいけない
 (7)むすび
    第U章での引用文献・参考文献
第V章 何故、男は女を愛し、女は男を愛するのか(大脳生理学)
 (1)はじめに
 (2)男が女を愛し、女が男を愛する理由
 (3)男と女の関係を決める要素は何か
 (4)男と女のつりあった関係
 (5)むすび
    第V章での引用文献・参考文献
終章、あとがき

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