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(2)男が女を愛し、女が男を愛する理由

 男は女を、女は男を求め、恋愛をしたり、結婚をしたりする。では、何故、男と女はお互いにひかれあうのだろうか。人間は何故、恋をするのであろうか。それは、根本的には動物のオスとメスが互いにひかれあう状態と同じである。

 例えば動物の場合、自分がオスだメスだなんて自覚しているわけではない。ただ、自分自身の中からにじみ出てくるものが異性を求め、生殖しようとするわけである。人間の場合、脳が大きくなって言語能力が発達したから、自分を男だ、女だと意識できる。そのため、異性を求め恋するだけでなく、その欲求を修飾するような脳のはたらきがある。それが、恋を愛にまで高めるわけである。例えば、好きな人に冷たくされて、「どうして冷たくされるんだろう」と思い悩んだり、「あの人は私のことがやはり嫌いなのだろうか」と心にさざ波が立つのも、すべて人間ならではの高等な脳のはたらきである。さて、サルは恋しかしない。恋をして、そして相手に受け入れられれば生殖をする。受け入れられなければ、それでおしまいである。そのため生殖機能がなくなったメスはオスにそっぽを向かれてしまい、あとは一人で寂しく死んでいくのである。つまり、サルには恋を愛にまで高めて、老いを異性と暮らそうという衝動は起こらないわけである。一方、人間は恋を愛にまで昇華できる。愛というのは、人類が霊長類から進化する過程で新しくできた脳、大脳皮質でつくられる幻想、つまり人間ならではの文化といえる。例えば、愛した異性がそばにいるだけで胸がいっぱいになったり、安らぎを感じたりする場合である。これなどは、全て脳がそうさせているわけである。以下で、そのメカニズムを簡単にふれておく。人間の脳は大きくわけると大脳と小脳の二つがあり、大脳が全体の75%を占めている。その大脳も大きく二つにわけられる。一つは、動物の時代からあった部分。もう一つは、人間に進化する過程で急激に大きくなった部分である。前者のことを、「大脳辺縁系」という。これは、人間の本能的な運動や行動を統括する脳で、「動物の脳」と呼ばれている。後者は、「大脳新皮質」といい、人間の高度な精神作用をつくる「人間の脳」とも呼ばれている。

 さて恋をして、からだにさまざまな反応を起こさせるその命令の発信源は、大脳新皮質(人間の脳)の中に存在する。その場所は、ちょうど頭の前の部分、おでこのあたりに位置している。人間の高度な精神作用をつくりだす最上位の部分で、とくに前頭連合野と呼ばれている。特定の異性を「好き」だと思うおおもとの判断は、この前頭連合野が下している。目に映った相手の姿、耳に聞こえてきた声、そして嗅覚に訴えるニオイなど、五感に訴えてきた情報を根拠にして判断するわけである。例えば、「彼(彼女)は優しくてステキ!」という判断も、この前頭連合野の部分で行っている。さらに次の段階として、前頭連合野から大脳辺縁系(動物の脳)の中にある性欲をつかさどる部分、つまり性欲中枢に命令が伝達きれる。その性欲中枢のすぐそばには、ホルモンの指令センターともいうべき「視床下部」があり、ここに命令が伝わってくる。視床下部は脳のちょうど中心にある、アサガオ形をした一辺一センチほどのちっぽけな神経組織である。この小さな脳が性欲や食欲などの、人間を人間たらしめている欲求をつくりだす根源の脳なのである。こうして視床下部に命令が伝わると、ただちにホルモンが分泌され、その働きにより交感神経が刺激され、血管の収縮運動が起きて、胸がドキドキと高鳴ったり、からだをほてらせたり、血圧が急激に上がったりするわけである。ちなみにホルモンとは、「刺激する」(ホルマオ)という意味から名づけられた言葉である。ホルモンは体内のさまざまな場所でつくられ、直接血液などの体液の中に分泌され、体内の離れた場所へ指令を伝達するはたらきをしている。以上のことから、男が女を愛し、女が男を愛する原因が脳に秘められていることが理解できた。さて次に、人間にとって理想の家庭とはどういうものであろうか。これについては、「男と女の関係を決める要素はどういうものか」を探ることによって判明してくる。故に以下で、男と女の関係を決める要素とはどういうものかについて考察していくことにする。


序章
 学問とは自発的行為である
 学問とは自己満足の世界である
 学問的行為者の学問的行為
 学問は必ずしも社会の役に立たないのは当然
 私的空間と公的空間をつなぐ方法−論文−
 序章での引用文献・参考文献
第T章 何故、日本の物価は世界と比べて高いのか(経済学)
 (1)はじめに
 (2)為替レートの変化
 (3)内外価格差の現実
 (4)むすび
    第T章での引用文献・参考文献
第U章 何故、戦争は起こるのか(国際政治学)
 (1)はじめに
 (2)戦争の歴史
 (3)経済的要因からみる戦争の出現
 (4)生物学的要因からみる戦争の出現
 (5)何故、戦争は起きるのか
 (6)経済制裁で、北朝鮮を追いつめてはいけない
 (7)むすび
    第U章での引用文献・参考文献
第V章 何故、男は女を愛し、女は男を愛するのか(大脳生理学)
 (1)はじめに
 (2)男が女を愛し、女が男を愛する理由
 (3)男と女の関係を決める要素は何か
 (4)男と女のつりあった関係
 (5)むすび
    第V章での引用文献・参考文献
終章、あとがき

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